経済

連合経済の難点

この記事を読んでの雑感。欧州、シェールガス商用生産 ポーランドで年内めど 2014/7/14 日本経済新聞 欧州、シェールガス商用生産 ポーランドで年内めど :日本経済新聞 まっさきに思い出したのは、福島原発事故後にドイツが表明した脱原発に伴う、電力コスト…

経常収支を理由に再稼働という理屈

経常収支の黒字を維持すること自体が政策の大目標になってはならない。なぜなら、それは国境をまたぐ非金融取引の出入りの数字の差し引きであり、ミクロ面では内需の強弱と外需の強弱が複雑に起因するし、マクロ面では貯蓄投資のバランスを反映するからであ…

外部性、内部化

このところ、自分の研究の大きな方向性を軌道修正しており、今日は備忘録として。銀行員として見た1990年代以降の日本企業のガバナンス上の行動や、サブプライム・バブルとその崩壊の顛末をWall Streetで経験して、「個⇔全体」や「短期⇔長期」のジレンマを改…

エコカー減税、18年超税率

車を持っている人なら、重量税の高さには毎年イヤになっていることだろうと思います。日本では、環境対応車は重量税が減免される仕組みになっていますね。これ自体は理にかなったいいことだろうと思います。「今の時点で」燃料効率の悪い車を購入すれば環境…

損益計算書は一方通行?(法人税減税と賃上げの議論)

ちょっと前の記事だが、今でも議論していること:法人税を減税して賃上げを求める珍妙な税制改正(ニューズウィーク日本版、2013年09月24日(火)): 法人税を減税して賃上げを求める珍妙な税制改正 | 池田信夫 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシ…

賃上げして物価が上昇するの?

賃上げを要請して、企業がほんとうに賞与アップかベースアップしても、日本全体の給与所得が増えるとは限らないよ。雇用数が一定なら、という条件つきでしょ。単価を上げることは、企業にとって雇い止めやレイオフの誘因となってしまうでしょ。雇用は企業の…

18年ぶりのポーランド大使館

ある種自分のルーツでもあるポーランドの世界に、久しぶりに触れてきた。 今年で9回目になるというフォーラム・ポーランド会議に参加しまして、テーマが社会科学系だったこともあり恩師である関口時正先生からご案内いただきました。私が学生だった当時と比…

統合報告と自律的な全体最適

昨今私が関心を持っているのが、企業の非財務情報(例えば長期的戦略、株主戦略などのコーポレートガバナンス、組織、人権、労働慣行、環境対応、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティへの参画など)と財務情報とを一緒にアニュアルレポートとして公表…

いまさらAIGの特集記事

昨日9月8日(日)の日経さん11面に、「日曜に考える」てなことで2008年のAIG救済の話が特集に。当時はAIGのNY本社の調査部のアナリストだったので、現場はどうなっているのかと世界中の社員や一部メディアから連絡が殺到していました。でも心の中は、自分…

「東京」に思うこと

東京に生まれ、東京で育ったからこそ、今や傍から東京を見るようになって思うことがたくさんある。あの人間の渦の中で違和感なく育ったから、新宿・池袋・渋谷の雑踏、ギューギュー詰めの地下鉄、環七の交通事故、歌舞伎町のポン引きや、世界一モノが揃う買…

米中首脳会談とその報道に思うこと

各新聞などでは、まずは尖閣問題などでの対立点をトップに持ってきて、北朝鮮の核開発問題については協調姿勢を示していることなどを列挙している。たぶん、今回の首脳会談で何が語られたかについては二次的な重要度であって、一番重要なことは8時間にも及…

The same old rhetoric

米次期通商代表、日本の自動車市場開放に意欲(2013年6月7日、日経新聞)為替の変動は、資金供給の結果で、それが目的ではないですね。日本の自動車市場はとっくのとっくに解放されています。関税は低いし、非関税障壁なるものは人間同士の信用とかに関わる…

日米経済摩擦沈静化についての集団間社会心理学的一考察

元あほあほサラリーマン・・・ ☟ ひょんなご縁から大学教員に関心を持ってしまった ☟ やばい、研究しなくちゃ。誰もやらないことをしなくちゃ・・・ ☟ 日米中政治経済研究会?? 日米経済摩擦のことなんて五万と本が出てるし、何を書きゃいいんだよ・・・ ☟ …

大恐慌と今を比較した雑感(やはり個と全体の不一致かな)

1920年代の金本位制(つまり通貨は固定相場制)の時代、経常収支赤字国にはそもそも物価下落圧力がかかり、経常収支黒字国では逆に物価上昇圧力がかかるはずであった。しかし現実には、為替による自動調整機能がなく、経常収支黒字国は物価が上がると財・サ…

「成長はいらない」のか?

昨日のトクヴィルの言葉の含意には大いに賛成する一方、一部の経済評論家が言うように、ほんとうに「成長はいらない」のだろうか。私の知る「成長いらない」論のほとんどは、金で買えないものがあることとか、GDPは万能な尺度じゃないこととか(それは事…

幸福と等しく限られた時間

トクヴィル『アメリカの民主主義』(1835)、『時間意識の近代』より; 「この世の幸福の追求だけに、自らにこころを奪われている者は、常にせきたてられている。なぜかというと、彼はこの幸福をみつけ、これをかちとり、そしてこれを享受するために、限られた…

アベノミクスについての対論、産業と労働

2000年過ぎ頃からスティグリッツ先生が繰り返し言ってきたことと整合性は取れていて、無責任な感じはしません。が、ここまで言い切れるほど私自身はいわゆるアベノミクスに確信はないのです。Project Syndicate The Promise of Abenomics by Joseph Stiglitz…

経常収支黒字は日本にとってそんなに大切なのか ― 貯蓄・投資バランスから見た一考察

Will Current Account Surplus Matter So Much to Japan? A Perspective from Its Savings-Investment Balance弊学部の紀要に、人知れず実にひっそりと、こんなん書いてみたりした。 ・・・ふーん、それで??http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/ir/college/b…

素朴な疑問への私なりの回答

昨晩、World Economic Forumの元同僚でGlobal Leadership Fellows Programme(以下GLF)を運営するJuraj Ondrejkovicと京都で飲んだ。彼はスロバキアのブラティスラバ出身。ちなみにGlobal Leadership Fellows Programmeとは、ダボス会議などを運営するWorld…

普段使わない脳

このところ、研究の大テーマ策定と計画書作成に向けて、慣れない哲学の本に明け暮れていることが多くなった。めっきり、肝心な経済のことに触れていない。今の職場での契約がちょうど折り返し地点にあったり、あるいは今はもしかしたら人生のちょうど折り返…

フィッチによる日本の格下げ

フィッチが日本国債の格付を「AA-」から「A+」に下げました。ちょっと前ですが、5月22日(火)のことです。一番気になるのが投資家の反応ですが、財務省データを見る限りは、ほとんど動きがなかったようです。 http://www.mof.go.jp/jgbs/reference/inter…

竹中平蔵氏

月曜日夜にNHKでやっていた「マイケル・サンデル 究極の選択 『許せる格差 許せない格差』を興味深く視聴しました。 http://www.nhk.or.jp/hakunetsu/harvard.htmlサンデル氏による議論の運営の明快さは何度見ても圧巻で、しかも今回は以前の東大で行われ…

シゲキ的な出張、左脳も右脳も

金曜朝、大阪のリーガロイヤルホテルのラウンジで、某金融ホールディング会社の副会長と面会。この方、70歳近いのですが頭脳明晰で言葉も切れ味抜群、お会いするたびに新しい着眼点に気づかせていただいています。かつては日本屈指のインベストメントバンカ…

陰謀説

アメリカ嫌いは全世界でみられることで、ヨーロッパにいたときもアメリカへの冷ややかな視線を感じていました。また中東やアフリカなどがアメリカに抱く複雑な感情は理解できます。日本にももちろんいて、国内・国際情勢に応じてこの人たちが声高になるとき…

危うい論理

前職では日本にいる学識者を国際会議にお呼びする関係で、日本の政治学者や経済学者の動向を気にして見ておりました。日本を代表して、世界の論壇に議論で打って出られる方はそう多くはなく、来られる方は毎年同じ顔ぶれとなっており、英語と中身の両方を備…

インタゲ

経済を教える教員が経済の根本に関する見解を変更されては困る、という方もいらっしゃいましょう。しかし、やっぱり人は常に何が正しいのかを追い続けなければいけないし、その過程において考え方が変わるのは当たり前のことだと思うのですね。このEconomist…

格付会社と信用

イタリアとスペイン格下げ、ユーロ圏危機悪化で=フィッチ イタリアとスペイン格下げ、ユーロ圏危機悪化で=フィッチ - ロイターかつてサブプライムバブル崩壊時に、そのバブルの形成に貢献してしまった格付会社が叩かれたことがあった。その理由は、格付会…

国の経済の競争力って?

これ、私が昨年2月まで属していた組織が出しているもので、ダボスの次に売り物にしているものです。日本の競争力9位に後退、政府債務は最下位142位 :日本経済新聞http://www.weforum.org/issues/global-competitiveness世界経済フォーラムに着任する前からず…

スイス中央銀行の対ユーロ上値設定のこと

ギリシャだのアイルランドだのスペインだの「その他欧州」の状況が悪く、結果として相対的にスイスフランが買われ、通貨高に悩んでいるのでした。私が2010年3月までスイスにいた頃の感覚的な相場は1ユーロ=1.5フラン近辺で、車で5分フランスに出てよく…

財政のこと

さて、たまには経済に関する話も書かなくっちゃな。安倍政権以降、毎年首相が変わる体たらくて、日本が世界に恥じる政府債務/GDPの数字は以後拡大の一途なわけですね。それはひとえに、プライマリーバランス(利払い・利息収入を除いた財政本体の年間の…