損益計算書は一方通行?(法人税減税と賃上げの議論)

ちょっと前の記事だが、今でも議論していること:

法人税を減税して賃上げを求める珍妙な税制改正ニューズウィーク日本版、2013年09月24日(火)):
法人税を減税して賃上げを求める珍妙な税制改正 | 池田信夫 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト


5段落目が気になった。ほんとうに、「企業の目的は税引き前純利益の最大化であって、これは法人税率にも消費税率にも依存しないから、国内企業の行動は変わらない」のだろうか。たしか、出所は失念したが、同じような時期に野口悠紀雄氏も同じような発言をしていた。どっちかがどっちかの発言に乗っかったのだろうと思う。

まず、企業の目的は「税引き前純利益の最大化」なのか。十数年前まで銀行員だった常識からすれば、経常利益か、やっぱり最終的な当期利益という気もしないでもない。敢えて税引前当期利益が最重要ベンチマークだというのは、聞いたことがない。株主利益を重要視するのであれば、法人税を含む全ての出入りを込み込みで考えるはずだから、見るべきものは当期利益となるだろう。

池田信夫氏や野口悠紀雄氏の理屈では、企業の支出は損益計算書の上から順にしか考えていなく、支払給与と支払法人税を相互にバランスを考えてはいない、ということになる。そんなはずはなかろう。法人税、配当、賃金、他の項目など、企業はそれぞれのバランスを戦略的に考えているに決まっている。

池田氏の結論である「日本の成長率を上げるには、規制改革でこうした悪条件をなくし、企業が日本に投資できる環境をつくることが重要」であることには大賛成だ。従業員単価での賃上げが経済全体の給与所得増につながるとは限らないことは、昨日「賃上げして物価が上昇するの? - Econ少年漂流記」でも述べた。だからこの部分については同意する。しかし、ニューズウィーク誌記事のタイトルで蹴散らすほど、法人税を減税して賃上げすること自体が「珍妙」とは言えない。法人税減税が賃上げに無影響なわけではなく、賃上げそのものの効果を考えなければならない。