18年ぶりのポーランド大使館

ある種自分のルーツでもあるポーランドの世界に、久しぶりに触れてきた。

今年で9回目になるというフォーラム・ポーランド会議に参加しまして、テーマが社会科学系だったこともあり恩師である関口時正先生からご案内いただきました。私が学生だった当時と比べ、日本におけるポーランド学の層が厚くなってきているのがよくわかりました。すばらしいことですね。コザチェフスキ駐日大使をはじめ、興味深い講演と討論を拝聴しました。

岡山大学の田口雅弘先生とお話をしたときの言葉が印象的でした。それは、こうしてポーランド関係者の層が厚くなることはたいへん喜ばしいことである一方、ポーランドの専門家に対する需要が減っているとのことでした。特に社会科学について、なのだそうです。私が学生だった90年代前半は、民主化直後でもあり、中東欧移行国最大の国としての特殊性が十分にありましたが、今やポーランド普通の国です。共産圏時代の名残はもちろんありますし、カトリック教会の影響力などの特殊性もありますが、基本は立派な民主主義が成立しており、市場経済も根付いた、多様な産業分布を抱えた国なのです。

もちろん、東にロシアがあり、NATOの前線であるという地政学的なことはあります。今回議論されたエネルギー問題についても、欧州全体にとってポーランド地政学的な位置は極めて重要です。でもこれは、ポーランドだけではなく周辺の国々と一体で考えることでもあります。

学生時代にポーランドや中東欧に傾倒し、銀行員になり、ウォール街で6年アナリストを務めてスイスで会議屋さんをちょっとやった私が、果たして日本経済やら企業論やらばかりを研究対象にしていて、果たして世の中に付加価値を与えられるのでしょうか。今回の東京訪問は、自分のルーツを再確認しつつ将来の方向を改めて考えさせられる、個人的にたいへん刺激的な旅でした。

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恵比寿のはずれにあるポーランド大使館から、代官山のTSUTAYAに初めて行ってきました。丸善本店にかつてあった松丸本舗、六本木の青山ブックセンター、京都の恵文社など旧来的な概念を変える書店が流行ってきている中、しょせん俗っぽいTSUTAYAがやっている真似事だろうとタカをくくっていました。でも、現場に足を踏み入れて、なんというか、なめてかかってごめんなさい、という気分でした。いやー、参った。シームレスに並ぶ新旧和洋・書籍-非書籍、あの迷路のような空間といい、何時間でも過ごしていられそう。
生まれも育ちも東京の私がいつの間にか京都の田舎もんになり、言い表しがたい嫉妬ような感覚さえ抱きました。