牛脂

日本人の不思議なほどの脂志向は一体なんなのだろう。巷では、まるで脂が多ければ多いほど良いとされているみたいだ。多くの「霜降り肉」は、少量ならよいが、ちょっと食べると胸焼けしてしまう。昨今高級ホテルが牛肉の偽装表示などで問題になっているが、それらの中には赤身に人工的に脂肪を注入しているものも多くあったようだ。

牛肉のほんとうの味わいは赤身にあると思う。脂ではなく、赤身の味わいこそ肉だ。柔らかいながらも歯ごたえがある赤身で、コショウをきかせた醤油ベースのタレで食べるのが最高だ。

ちなみに言えば、マグロにも似たようなことが言える。ほんとうに味わい深いトロはそうそう世の中に出回っていないが、それでも人々はとりあえず脂っぽいトロを好む。そんなものより、あじ・いわし・さんま・さばなどのヒカリモノの方が数倍旨い。これらの脂は、それこそ自然に肉の中に含まれている。