陰謀説

アメリカ嫌いは全世界でみられることで、ヨーロッパにいたときもアメリカへの冷ややかな視線を感じていました。また中東やアフリカなどがアメリカに抱く複雑な感情は理解できます。

日本にももちろんいて、国内・国際情勢に応じてこの人たちが声高になるときがあります。例えば1960年や1970年の日米安保闘争、1980〜90年代前半の日米経済摩擦のころ、そしてリーマンショック後の今、などです。リーマンショックを受けて「それ見たことか」と居直り、TPPはアメリカが権威を回復するための陰謀だとするわけです。たとえ経済学者であっても多くの人が経済学的な分析を端折り、結論が始めから決まった発言をしているのを時折見聞きします。

私自身、TPPについては態度を白黒つけていません。その必要がないから、です。有利なら締結すればいい、そうでないなら辞退すればいい、それだけです。諸外国の出方と互いに提示する条件次第で変わってきますから、現時点で答えがあるわけがない。必ず守るべきだと思う部分はあります。特に医療ですね。日本の医療も制度の抜本的改善が必要ですが、そもそもアメリカはめちゃめちゃです。利用者目線で痛感しています。日本の先進医療は、個別に厚生省が認可してゆく今の体制と、民間の保険で部分的に対応するセットで十分じゃないかと思います。農業については、穀物・稲作以外は統計上さほどの心配をしていないのですが、ここでは触れません。
全面開放は、日本はさておき、アメリカができないでしょう。アメリカはニュージーランドの乳製品が怖い、亜熱帯国の砂糖が怖い、日本の自動車・自動車部品が怖いんです。民主主義がゆえに、自ら提案した国際連合に加盟しなかった国ですから。
とにかく完全に全てオープンにしなければならず他に何の余地もないのなら、日本の加盟は無理でしょう。でも、そんなわけがない。

話は陰謀論に戻りますが、世のサヨクさんたちは何事も批判ありきで、無批判な輩を見ると我慢ならないようです。しかし、私が思うに、多くの方々は無批判に批判をしているというパラドックスに気づかれていないように思うのです。

もちろん無批判な批判の前提として、日米経済摩擦の記憶があるわけですが、その記憶ですら一面的な見方で、アメリカの実態を反映したものではないと思うのです。

萩原伸次郎氏(横浜国立大学
TPP質疑参考人 萩原伸次郎 - YouTube

宇沢弘文が語る「TPP」
宇沢弘文が語る「TPP」 11/03/05 - YouTube
あちゃー。一部の方々には神のように崇められている宇沢先生ですが、田中康夫に媚売っちゃあなぁ。「社会的共通資本」はそれなりに説得力がありますが、氏のTPPの話はそもそも論理じゃない。単にミルトン・フリードマンが嫌いだからなの?

中野剛志(京大准教授)
TPP反対・中野剛志の解説がわかりやすすぎる! : 座間宮ガレイの世界
このビデオ、中野氏の落ち着きのなさがちょっとねー。司会者も「レイプしてください」「去勢してください」だの、破廉恥極まりない。。。

特に中野さんはマスメディアに頻出していますね。「アメリカがドル安に誘導する・・・」ことが前提になっているようなお話ですが、いつアメリカが為替介入したんでしょうね?あるいは誰かが号令をかけて、市場を誘導しているのですか?そんな事実ありません。アメリカにはドル高の利権とドル安の利権の両方がせめぎあっています。「関税の防波堤を失った日本市場にアメリカの農産物が襲い掛かってくる」かどうかは、日本の消費者次第です。アメリカの野菜マズイから、あんまり売れないと思うよ。穀物と肉でしょう、問題は。今の日本の農業を保護することが日本の国益だという判断であれば、辞退すべきでしょう。圧倒的多数の消費者の利益は考えているのかな?どうも始めからNoという結論がある気がしてならない。たぶん中野氏はTPP抜きで農業の改革をすべき、とでも言っているのかもしれませんが、氏の著作に時間を費やしている気にはなれません。

「安いものを輸入して物価が安くなる、自由貿易になったらデフレがもっと激しくなる」
ありゃー、言っちゃったよ。トンデモ経済学。。。安くなった分、需要が他の商品に代替され、貯蓄が一定とすれば物価全体は一定のはずです。つまり輸入で相対価格が下がれば、実質所得が上がるということ。これが天下の京都大学大学院の准教授かぁ。天下の同志社大学大学院教授の浜矩子さんのユニクロ理論と同じ誤謬です。立命館だって・・・。京都ってダメなのかなー。

「TPPで包囲されているのは日本だ」
キタコレ。。。アメリカの実態を理解していれば、アメリカには色々なinterestが交錯していて、TPPの問題で日本に陰謀を仕掛けられるほど一枚岩ではないことは、簡単にわかることです。3億以上の人口、多民族国家、言いたい放題の言論、そしてロビイストが好き放題利権追及をしてくる国ですから、「アメリカが」と一括りにできるわけがないでしょう。日本国内を見たって賛否色々な意見があるでしょう。それと全く一緒ですよ。



・・・なんか最近こんなことばっかり書いてるな。もっと生産的なことしなきゃ。