格付会社と信用

イタリアとスペイン格下げ、ユーロ圏危機悪化で=フィッチ
イタリアとスペイン格下げ、ユーロ圏危機悪化で=フィッチ - ロイター

かつてサブプライムバブル崩壊時に、そのバブルの形成に貢献してしまった格付会社が叩かれたことがあった。その理由は、格付会社がサブプライムローンを含む投資商品の評価がしっかりできていなかったことであった。確かに、その信用力を評価するのであれば、債権の中身を精査すべきものであっただろう。格付会社は、盲目に発行体の信用力で判断するという失敗を犯した。

一方で格付会社を盲目的に信用した機関投資家個人投資家たちも、結局は盲目に格付会社を信用した。情報の非対称性の連鎖が招いた問題であったが、それではもし格付会社が存在しなかったら、投資家は得られる情報をもとに、自力で投資先の信用度を精査するであろう。「いちいちそんな暇はない」「経済学の知識がない人間にも投資を促す仕組みを」というご批判もあろうけれども、自己責任を追求すれば、それがベースになるはずだ。つまり、格付会社自体が情報の非対称性に拍車をかけたともいえる。

格付会社の役割で最も気になっているのは、格付の上下によって市場同行を誘導してしまうこと。これは果たして格付会社の役割なのだろうか。市場は格付に比例した動きをするわけではなく、その一時的動きに過剰に反応する。それによって、例えばこの記事のような欧州の債務危機において、ただでさえ欧州各国は信用不安を起こさないように交渉やPRなどを極めて慎重に行っているなかで、格付会社の発表一つで足元をすくわれかねない。前段落のような経済リテラシーを世界中の投資家に問うのは無理があるが、それにしても格付会社を盲信することは危険である。大体、金融界あるいはエコノミストたちの世界で、必ずしも優秀な人間が格付会社のアナリスト業になっているわけではない。これは日米欧亜共通である。

また、格付が信用の度合いによって「AAA」から「CCC」へ一直線上に並ぶということにも、あまり意味をなさない。例えば国債の信用力についても、財政規律、経済成長率、金融政策、雇用、金融市場の成熟度、政治や腐敗など、多種の項目が極めて複雑に影響しあっており、1次元の座標軸では実態を投影できない。

格付会社は、一直線上の座標軸で説明し、あくまでも「単純化」しているにすぎない。それは、投資情報のコンビニ弁当屋さんであり、お手軽ではあるが、盲信は考えものだ。