素朴な疑問への私なりの回答

昨晩、World Economic Forumの元同僚でGlobal Leadership Fellows Programme(以下GLF)を運営するJuraj Ondrejkovicと京都で飲んだ。彼はスロバキアのブラティスラバ出身。

ちなみにGlobal Leadership Fellows Programmeとは、ダボス会議などを運営するWorld Economic Forumの若手幹部候補生育成プログラムのようなもので、仕事のかたわら合宿などもあり、3年間で修了すれば修士号ももらえる。私も退職まではここに属していました。

京都大学が新たに手掛ける「博士課程教育リーディングプログラム思修館」とかいうところから、GLFではどのように運営しているのか教えてほしい、との依頼がJurajにあったらしく、天津でサマーダボスが終わったついでに日本にも立ち寄ったとのこと。なんと11月には、思修館のジジイ教授陣が5人もそろってジュネーブにヒヤリングに行くらしい。少しは予算を分けてほしいな。

さて、Jurajの素朴な疑問。日本やアジア全般のことにさほど詳しくない人に向けて自分の意見を明確に答えるのは、案外簡単ではない。

 
質問1.今の日中間で起きていることについて、どう思ってる?
質問2.日本経済の根本的な問題ってなんなの?女性就労を促すとか、移民を連れて来ればいいんじゃない?
 

 
回答1.
根本的には日中両国の政治が不安定であることの投影だと思う。体制転換期やリーダーの移行期は、政府が大衆迎合的になりやすい。中国も韓国もロシアもみんな今年国家元首が変わる。

外に敵を作ることで内での不満を和らげるというのは常套手段。大衆迎合的な政府のほとんどは、ナショナリスティックになる。中国の場合は特に所得格差などの国内問題の調整が難しい。さらに自由な言論がない一方で、情報はどれだけシャットアウトしても限界がある。

反日デモについても、政府が非常にデリケートな運営をせざるを得ない。不満が暴発すると、天安門事件の二の舞になりかねない。

日本は日本で、2009年の民主党政権発足以来、外交は脆弱であった。普天間問題などで日米間の信頼関係が揺らぐと、北方領土竹島尖閣諸島など一気に火がついた。民主党はナショナリスティックとは言えないが、脆弱な隙を近隣諸国が突いてきた。
今はさすがに外交的対話の出番。


回答2.
財政と人口問題。その他の問題も相互に連関している。
一般会計の3割以上が社会保障費であり、膨張している債務の利払い費だけで2割以上を割いている。少子高齢化が進むと、更にこれが悪化することは明らか。

日本の年金システムは賦課方式で、老年層が生産年齢層よりも相対的に増えてゆけば、破綻するにきまっている。政府はRetirement Accountのような積立式に徐々に移行させることを検討しているが、各党や党内で政治ゲームに勤しんでいて時間ばかりが過ぎていく。

男女雇用機会均等法が1980年代半ばに改正されてから、女性就労についてはずっと言われてきた。多少改善はしている。しかし、どうしたら就業して能力を発揮したいと女性が思うか、という女性の動機の面から物事を発想しない日本のジジイたちは、30年近くたってもこれに成功していない。既定概念にとらわれているという意味では、悪い意味での日本的な失敗例だと思う。

移民受け入れについては、私も個人的には賛成だ。ただ、残念ながら日本社会が受容しないと思う。ドイツでのトルコ人移民たちが60年くらい経っても社会に溶け込めていないように、今の日本の社会がよそ者を受け入れられるほど寛容には見えない。現に日系ブラジル人の労働者たちは、日系の血を引いているにもかかわらず、日本の社会に組み込まれているとは言えない。これでは移民の方々に失礼だ。私はついこの間まで外国人労働者だったから、その気持ちはよくわかる。