国の経済の競争力って?

これ、私が昨年2月まで属していた組織が出しているもので、ダボスの次に売り物にしているものです。

日本の競争力9位に後退、政府債務は最下位142位 :日本経済新聞

http://www.weforum.org/issues/global-competitiveness

世界経済フォーラムに着任する前からずっと疑問視していたし、内部にいても何度も異議を唱えていて、今でもそうなんだけど、国の経済の競争力って、一体なんでしょうね?経済成長率のレース?投資を呼び込むための魅力?国民の幸せ度合?

ノーベル経済学賞をとっちゃったポール・クルーグマンがかつての著書Pop Internationalismでも述べていましたが、一国の経済成長が、他国の経済成長の犠牲のもとにあるわけではない、というのは納得できます。ピザのパイ生地の面積が決まっていて、それをイッセーノセで取りあいっこする性格のものではない、と。

一方で、産業単位や企業単位では当然競争はあるわけで、これらが積み重なったものが国同士の競争ということなのでしょうか。

微妙に内外のルールが違うのをいいことに政治的に圧力をかけてきたのが日米貿易摩擦などで顕著になりました。でもそれは90年代前半までの話。今やWTOも発足して、中国まで批准して、もうかつての日米半導体交渉のような理不尽なことはルール上はあってはならない、という合意ができています。建前ですけど。

で、輸出側(生産力)だけではなく、輸入側(あるいは国内需要)が強いことも国の競争力があると言えるでしょう。サービス業を含めてね。つまり、出も入りもその中身次第で、収支を見ただけではよく分からない。

技術力や労働生産性が高い国は、対外投資をする力があるから競争力が高いと見るのか、あるいは法や社会インフラなどがしっかり整備されていて対内投資を受け入れる力があるから競争力が高いと見るのか。これも両方でしょうね。


・・・何が言いたいのか? 「私が定義する国の競争力とはこれです」という中身によって、結果は変わってきてしまう。だから世界経済フォーラムのものとIMDのものは結果が違う(ちなみにこの両者のルーツは一緒らしい)。つまりこのランキング、あんまり意味ないと思う。