車検戻り

さて、わが117クーペ様が車検から戻ってきた。娘の幼稚園での親友のお父さんがその道のプロで、そんじょそこいらの自動車修理場にはない知識と腕の持ち主なのだ。彼の勤めるところで良心的に対応していただき、金銭的なこともそうだが、何よりも心理的にありがたい。

一番の懸案は排ガス。測ったら規定を越える排ガスだったので試行錯誤して、ガソリンがずいぶん濃いことに気づき、量を減らした。どうりで燃費が悪かったわけだ・・・。2つあるキャブのバランスにも問題があったのでキャブバランサーを買い、調整してもらった。あとはブレーキ・オイルを交換してキャップがしっかり固定されるようにし、下全体に防サビ剤を塗ってもらった。オイルとオイルフィルターを交換し、プラグを換え、ラジエーターキャップを換え、辛うじて車検通過。。。

と、ここで諸々必要になるものは全て業者ではなくて私が専門のメーカーなどに直接オーダーして入手するので、これまたたいへん。旧車の宿命だ。インターネット様様。

と思ったら、突然ヘッドライトがつかないという事態に。夜なのに無灯火で京都の四条烏丸から「神の手」の彼が住む北嵯峨のさらに北の果てまで運転した。最後は森の中、数百メートル真っ暗(月明かりすらない!)な中をスマホの懐中電灯機能を使って窓の外に右手を出して前を照らし(中からだとガラスに反射して前が見えない)ノロノロ進んだ。

ヒューズといい配線といい40年近くも経っていて、ちょっと接触が悪かったり、ゴムや銅線劣化したり、これは致し方ないらしい。いたちごっこで対応していくしかない。気温マイナス2度の暗い中で応急処置をしていただき、無事点灯!

翌々日、こんどはアイドリングが不安定なまま40〜50分くらいバフバフいったまま、動力が車になかなか伝わらない状態が続いた。ガソリンを薄くしたこともあり、冷えた状態ではアイドリングがとても不安定ですぐにエンストしてしまう。

さらに翌々日、おそるおそる運転してみて、当初の暖機運転の状態では相変わらず不安定だったが、車を一旦清滝の果てまで2〜3速で高回転で走らせ、さらに下りも同様に高回転で刺激したところ、命を吹き返してきてくれた!! おお!! この車はこうでなくっちゃ!! 暖まったあとはすこぶるゴキゲンなのだ〜〜!!

今日はピカピカに磨いてあげた。メッキクリーナーも使って。

こんどは、初期ハンドメイド用のメッキのフェンダーミラー買ってあげるね〜〜。似合うぞ〜〜〜。
そしてもっとお金ができたら、触媒つきのマフラーね。

経常収支を理由に再稼働という理屈

経常収支の黒字を維持すること自体が政策の大目標になってはならない。なぜなら、それは国境をまたぐ非金融取引の出入りの数字の差し引きであり、ミクロ面では内需の強弱と外需の強弱が複雑に起因するし、マクロ面では貯蓄投資のバランスを反映するからである。もちろん、一国の貯蓄投資バランスが内需と外需の強弱と対の関係であることは言うまでもない。

経常収支の状態があたかも国力を示しているかのように語られるのは、あまりにも経済にうとい政治的レトリックである。極端な話、チャウシェスク独裁時代のルーマニアでさえも、一時的にでも輸出超過の状態を人為的に作って経常収支黒字にしていた。いわゆる「飢餓輸出」といわれているもので、自国民が消費すべき分まで輸出し、飢餓の代償として外貨を稼ごうとする倒錯を起こしていた。

3.11前の日本の経常収支黒字だって、弱い内需とそれゆえに豊富な家計・企業の貯蓄に裏付けられていた。つまり、経常収支黒字だからいいわけでもなんでもない。


エネルギー基本計画、首相「現実見据えバランスとれたものを」(TBS、2014年2月10日)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2124025.html

今の安倍政権が唱える新エネルギー基本政策は、原発再稼働しないことによって化石燃料の輸入が急増するから原発は再稼働すべき、というものだ。私はこの点には納得がいかない。

原発再稼働をしないことによって化石燃料の輸入が急増していることがミクロの現象である一方、それによってエネルギー価格およびその波及による物価の上昇により、個人・法人・公共部門それぞれの貯蓄投資バランスに負の圧力(「相対的に」貯蓄減)がかかるのがマクロの現象ということになる。あるいは米欧中の不景気(中国にはさらに政治的背景も)に伴う需要減もミクロの面から見ることができるし、その集合的帰結としてマクロの現象についても語ることができる。

ところが、エコノミストの中には、昨今の経常収支の統計を紐解くと、化石燃料輸入増による原因は限定的であるとも指摘している。

しかも円安による経常収支黒字化の効果が限定的というエコノミストが多い。もし円安が恒常的になれば時間差でそろそろ経常収支にプラスに効いてくる(いわゆるJカーブ)かもしれないが、現時点ではそうはなっていない。もし化石燃料輸入増による経常収支への負のインパクトが限定的なら、昨今の赤字化は産業構造および貯蓄投資のマクロ構造の長期的変化とみるべきなのかもしれない。もしそうなら、今は体外直接投資を旺盛に行っていることによって赤字化しているが、長期的にはそれによる所得収支の入り超過となり、故にさほどの心配はいらない可能性もある。

経常収支を理由に原発再稼働が必要というのは、やっぱり理屈が通らない。政策目標はあくまでも内需であり、経常収支は様々な要因から全体最適的に決まる副次的なものだ。

ただし最大のリスクは、経常収支赤字化のニュースが及ぼす投資家心理への影響だろう。仮に日本国債への信用が失われれば、いくら日銀が買い支えているとはいえ、経済全体に大打撃だからだ。

やっぱり財政を擁護するためか・・・だったら財政改革をちゃんとしやがれ。投資家だってそれに注目しているのだ。

本当に優先すべきなのは国内の経済活動の活性化であり、それは最大公約数的に国内の人々の全体的厚生に寄与する。

外部性、内部化

このところ、自分の研究の大きな方向性を軌道修正しており、今日は備忘録として。

銀行員として見た1990年代以降の日本企業のガバナンス上の行動や、サブプライム・バブルとその崩壊の顛末をWall Streetで経験して、「個⇔全体」や「短期⇔長期」のジレンマを改善させ得るような各種試みについて検証。

たとえば非財務情報/統合報告の制度化という事例が、これまでは外部性とみなされてきたことを内部化させる試みと仮定する。いわゆるコースの定理が成立するための諸条件とどれだけ沿っているか。

コースの定理:経済の外部性は、権利がどのように割り当てられたとしても、経済主体の自発的な交渉を通じて効率的な資源配分が達成される。
条件:交渉のための費用が低い、権利の帰属が明確、情報が均衡

コース:「企業・市場・法」

企業・市場・法

企業・市場・法

もちろん、コース以降、経済外部性についてはたくさんの研究が進められてきた。ロナルド・コースは昨年他界したが、これまで論文を引用された数字は世界でもトップか、トップに近いらしい。


セン:「集合的選択と社会的厚生

集合的選択と社会的厚生

集合的選択と社会的厚生

色々読まなければ。

エコカー減税、18年超税率

車を持っている人なら、重量税の高さには毎年イヤになっていることだろうと思います。

日本では、環境対応車は重量税が減免される仕組みになっていますね。これ自体は理にかなったいいことだろうと思います。「今の時点で」燃料効率の悪い車を購入すれば環境税を払う必要がある、というのは合理的でしょう。

しかし、ですね、「13年〜18年税率」、「18年超税率」というものもあります。これって、製造から経た年数が長いほど、税金を超過して支払う必要があるということ。18年超は10%加算されます。この合理性や、いかに。

まず認識すべきなのは、「古ければ古いほど燃費が悪い」とは言えないこと。もちろんリッター30キロとかいう次元の技術は最近の話ですが、古い中でも燃費のいいもの悪いものは様々です。古ければ古いほど排気ガスを多く排出する、というのも、メンテナンス次第。確率論的には悪くはなるのでしょうけどね。でも、単純に古いから高く徴税する、というのはおかしい。

もっとおかしいのは、この傾斜税率では廃車を促してしまうということ。燃費が多少いいのは結構なことだけれども、廃車にすることでの環境へのインパクトのほうがよっぽど大きいはず。実際、ヨーロッパなどでは古い車ほど車両税が低いのです。

自動車メーカーによる陰謀の匂いがしますが、おそらく間違いないでしょう。買い替えを促す方が自動車メーカーにとって都合がいいに決まっています。そこでは環境という経済の外部性が無視されているわけです。

税のシステムとは、その社会が目指すべき理念が宿っているべきものです。自動車重量税には、その「心」は残念ながらないと言えましょう。

大学中退を政府が阻止するべきなのか

というタイトルだから、もちろん阻止するべきではないというのが私の意見。基本は。

大学中退:文科省が全国調査へ 年6万人以上、防止策検討
毎日新聞 2014年01月31日
http://mainichi.jp/select/news/20140131k0000m040143000c.html

「基本は」というのは、例外があると思うから。学生に非がない場合でしょう。金銭的理由であったり、受け入れる大学の教職員側の問題だったりするケースだ。

「中退するから非正規雇用」という因果関係は、残念ながらあるとは思う。いわゆる大卒の正規雇用ルートが絶たれるというのは、既存の今の日本のシステムではたいへんだろう。そもそもこのシステム自体、日本国内の人材を固定化させ、労働市場を硬直化させる。市場の機能を利用して適材適所、つまりは全体最適に近い状態、にしない仕組みだ。もちろん企業もそんなことはわかっている。

問題はそこではない。仮に政府が関与して大学中退が減っても、そのことで非正規雇用が減るという因果関係はないはずである。非正規雇用増加の社会的現象は、労働供給側の「質」の問題ではなく、需要側、つまり企業側の都合である。

近年、大学生が幼稚化していると指摘されているが、それは全世代に言えることだ。大学の教職員による余計な(と思われる)介入が必要だったり、介入を求められたりするケースが多い。
しかし、学問的なノウハウの提供を除いて、教育のもう一つの目的は学生に自立してもらうことだ。教職員や政府による介入は、学生を自立させない。大学生をもっと自立した人間として扱うべきだ。

ドナドナ

来週、わが117クーペが、購入後初めて車検に。
色々な不具合はあるけど、どのくらい追加で出費になるかな。テールランプの電球くらいで済めばいいけど。
ついでに、エンジンルームの掃除、熱線の曇り止めやデフロスターなども手直ししちゃうと相当コンディションは良くなるけど、それくらいは自分でやろうかな。


損益計算書は一方通行?(法人税減税と賃上げの議論)

ちょっと前の記事だが、今でも議論していること:

法人税を減税して賃上げを求める珍妙な税制改正ニューズウィーク日本版、2013年09月24日(火)):
法人税を減税して賃上げを求める珍妙な税制改正 | 池田信夫 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト


5段落目が気になった。ほんとうに、「企業の目的は税引き前純利益の最大化であって、これは法人税率にも消費税率にも依存しないから、国内企業の行動は変わらない」のだろうか。たしか、出所は失念したが、同じような時期に野口悠紀雄氏も同じような発言をしていた。どっちかがどっちかの発言に乗っかったのだろうと思う。

まず、企業の目的は「税引き前純利益の最大化」なのか。十数年前まで銀行員だった常識からすれば、経常利益か、やっぱり最終的な当期利益という気もしないでもない。敢えて税引前当期利益が最重要ベンチマークだというのは、聞いたことがない。株主利益を重要視するのであれば、法人税を含む全ての出入りを込み込みで考えるはずだから、見るべきものは当期利益となるだろう。

池田信夫氏や野口悠紀雄氏の理屈では、企業の支出は損益計算書の上から順にしか考えていなく、支払給与と支払法人税を相互にバランスを考えてはいない、ということになる。そんなはずはなかろう。法人税、配当、賃金、他の項目など、企業はそれぞれのバランスを戦略的に考えているに決まっている。

池田氏の結論である「日本の成長率を上げるには、規制改革でこうした悪条件をなくし、企業が日本に投資できる環境をつくることが重要」であることには大賛成だ。従業員単価での賃上げが経済全体の給与所得増につながるとは限らないことは、昨日「賃上げして物価が上昇するの? - Econ少年漂流記」でも述べた。だからこの部分については同意する。しかし、ニューズウィーク誌記事のタイトルで蹴散らすほど、法人税を減税して賃上げすること自体が「珍妙」とは言えない。法人税減税が賃上げに無影響なわけではなく、賃上げそのものの効果を考えなければならない。