中年差し掛かり、脱サラ教員としての責任

37歳でスイスから帰国して大学の教員として着任し、間もなく3年が経ちます。早いものです。これまでこのような新米教員に関わってきた学生の忍耐力に感謝しなければなりません。

大学の役目の一つとして、実業界では取り上げられないアカデミックな研究に従事することが挙げられると思います。企業や役所の世界では、目の前にぶら下がる大量の仕事や3か月に一度やってくる決算など、あらゆる制約から超長期での研究に時間と労力を割くことがなかなかできません。

しかし、いくら大学や研究機関であっても、研究は研究そのもののために行われるべきではありません。仮に研究のための研究であっても、間接的に世の中のために還元されなければ無用の長物です。そして教育の根本的目的は、若い世代が社会で必要とされる見識を備えるように導くことに尽きるわけです。特に社会科学においては、その度合いは顕著でしょう。

社会科学分野の大学教員となった私の責任は、まさにここにあります。満足な水準にははるか及びませんが(たぶん一生満足はしないのでしょうが)、これまでの内外でのキャリアと、プライベートを含む様々な見識を講義や研究成果の形で普遍化させて、次の世代のために活用してもらわなければなりません。

みなさま、未来ある若い世代のためにご協力をお願いすることがあると思いますが、もし少しの余力があるときは、ぜひに。