野田氏と新しい日本

今回の民主党代表選は、最悪の事態は避けられた。

結局小沢一郎と、元老のくせして数取りゲームに興じている鳩山由紀夫を取り巻く政局だった。今回の政局については、小沢、鳩山、海江田、野田、前原はともかく、小沢と鳩山に連なる議員にその政治的意志を問い質したい。なぜなら、民主党の派閥は政策を反映したものでは決してなく、取り巻きとその影響力拡大を目的としているからである。まだ往年の自民党には、一枚岩とは言わないまでもそれなりに政策を語ろうとしていたようには思う。今は知らん。

つまり、今回の政局は歌舞伎町を取り巻く複数のヤクザ集団の抗争のようなものだ。ところが、案外渋いボスが勝ってしまった。ヤクザ抗争に嫌気がさした中堅〜若手議員たちが支えた。

早稲田政経から松下政経塾に行き、家庭教師や都市ガス点検員などを経験した意味では、民衆の目線が理解できない人ではなかろうが、基本は政治一筋の都会(千葉県船橋市出身)育ちである。永田町の常識に埋もれないことを強く願う。前財務大臣の藤井の辞任を受けて副大臣から横滑りしたわけだが、初入閣で財務大臣という意味では異例だろう。54歳と、随分見かけより若い。年齢の割には、活力がありそうに見えなく、マスコミと民衆への印象はたぶん大したことなかろう。

野田氏は現職の財務大臣で、今後は財政再建に注力するだろう。景気を殺すリスクはあるものの、一方で財政拡張そのものが信用不安を起こす臨界点に近く(と思う)、やはり財政再建に注力せざるを得ないだろう。就任して近いうちにそのヴィジョンと行動計画を国民に明示できれば、一定の評価を受けるだろう。今は先進国全体が財政難に喘いでおあり、その先鋒を行く日本が改善の道筋を示せれば、単に日本経済の信認回復に限らず、世界の投資市場にも好影響をもたらすかもしれない。だったらいいな。

今回の崖っぷち政権の行方は、マスコミと一般民衆次第でもある。これまでの日本のマスコミは、政治をきちんと評価できていない。悪いものは悪い、良いものは良いと評価すべきなのに、悪い部分のみを訴え世間にさらしものにしてきた。民衆としても、情報の質を取捨選別できるようにならないと、折角大衆の教育水準の高さで持ちこたえているこの国が、ほんとうに沈んでいく可能性だってある。

日本の政治社会の問題は、「個」が確立していないことだと思う。ここでいう「個」とは、「個」としての政治家や民衆を指す。民主主義の限界を訴える人々もいるが、問題の根本は民主主義というシステムにあるのではない。民主主義に不可欠な「個」の自由意思と責任が不在なまま、「和を尊ぶ・・・」「日本的・アジア的民主主義を・・・」と情に訴えるケースが多く、サヨク系インテリによく見受けられる。「和」を求めるのは大いに賛成だが、「個」が確立せずに「和」など成立するはずがない。「個」を無視して「和」を尊べというのは、戦前日本がやっちまったことだ。

GDP per capitaを上げることも重要だけど、日本人の生活満足度だって、根本はここにあるように思う。