相互理解、自己主張と“断念”

備忘録として、本日の印象的なもの。

「相互理解から相互信頼への道程は、意外と険しいということを私たちは率直に認めるべきだと思います。相互理解から相互信頼への道は連続的ではなく、一つの飛躍が必要なのではないでしょうか。双方が自己の主張を100%展開していたのでは、相手の主張が入りこむ隙間がないといっていいでしょう。そのとき自己主張のある部分を断念すれば、そこから相手の主張が染み入るように理解される回路が生まれ、相手がたとえ部分的にであれ、“断念”を示したことへの信頼から、関係としての相互信頼が生まれてくるのではないでしょうか。本当は庶民感覚では誰しもが知っていて、誰しもが普通の生活で実行していることなのです。」

隅谷三喜男「成田の空と大地」岩波書店、1996年、312ページ)